2026/09/16 11:33

砥部焼とは — 白い器に、藍の文様

愛媛県のほぼ中央に、砥部町という町があります。ここで作られている器が砥部焼です。

砥部焼は、粘土をこねて作る「土もの」ではありません。石から始まる器です。
この土地では昔から砥石が採れました。江戸時代、その砥石を切り出したときに出る石のくずを
原料に使って器を焼いたのが、砥部焼のはじまりだと伝えられています。それから二百五十年ほど。
いまも石を砕いたものを原料にしているので、焼き上がりは土ものではなく磁器になります。

国の伝統的工芸品に加えられたのは、1976年のことです。

白と、藍

手に取るとまず目に入るのが、生地の白さです。そして、その白い面に置かれた藍色。
この二色が、砥部焼のいちばん分かりやすい姿です。

藍色を描いているのは呉須(ごす)という顔料で、コバルトを主な成分としています。
おもしろいのは描く順番です。白い生地にまず呉須で文様を入れ、その上に釉薬をかぶせて焼き上げます。
だから文様は表面に乗っているのではなく、ガラス質の層の下に入っています。
洗っても擦っても絵が薄くならないのは、そのためです。

文様は唐草をはじめ、草花、鳥、線だけで構成したものまでさまざまです。

丈夫で、毎日使える

砥部では昔から、「夫婦喧嘩で投げても割れない」と言われてきました。
もちろん大げさな言い回しですが、それくらい丈夫な器だ、ということです。

砥部焼は厚みのある作りで、高い温度までしっかりと焼き締められています。
そのぶん縁が欠けづらく、熱の変化にも動じません。飾っておくための器ではなく、使うための器です。

厚みがあるので冷めにくく、うどんや汁物の鉢、コーヒーカップのように
「温かいまま食べたい・飲みたい」ものと相性がいい器でもあります。

ひとつだけ例外があります。
金や赤を使った上絵の器です。上絵は、焼き上がったあとの器に絵を重ね、もう一度窯に入れて焼きつけたもの。
釉薬の下に守られている藍の文様とは違い、絵が表面に出ています。
そのため西岡工房の器は、電子レンジ・食洗機は原則としてお使いいただけません
(一部、対応と明記しているものもあります)。商品ページの記載をご確認ください。

窯元ごとに、違う

砥部焼には「砥部焼という一つの決まった様式」があるわけではありません。
窯元や作家ごとに作風が違います。

同じ唐草でも、線の太さや余白の取り方で表情はまるで変わります。
近年は藍一色にとどまらず、やわらかな色を置いたり、
洋食に似合う形を試したりする作り手も増えています。

ワパルでは15前後の窯元・作家の器を扱っています。
「砥部焼が好き」のあとに必ず「どの窯元が好き」が来るのは、この幅の広さのためです。

ひとつずつ、少しずつ違う

文様は手描きです。型で押しているわけではないので、
同じ商品名の器でも、線の太さ、絵の位置、藍の濃さがひとつずつ違います。

これは不良ではなく、手作りの器がそういうものだという、それだけのことです。
届いた器の絵が写真と寸分たがわず同じ、ということはありません。
その一枚だけが持っている顔だと思っていただけたら嬉しいです。


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